万博を控えた関西のこれからの外国人医療は?〜第7回関西の外国人医療を考える会 開催レポート〜

  • 2月 9 2023
  • Ibuki SUEMITSU FERREIRA
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大阪・太融寺町谷口医院 谷口恭先生が中心となって2018年からこれまで5年間、コロナ禍もオンラインにて継続してきた「関西の外国人医療を考える会」が先日、大阪・梅田にてオンライン・オフラインのハイブリッド開催され、弊社代表 末光も自身の経験から「外国人目線で考える日本の医療の壁」について発表、外国人医療に関わる有識者7名のパネルディスカッションのモデレーターとして参加いたしました。


各登壇者からは、外国人医療においての事例や、これまでの変遷、それぞれの立場からの取組について発表されました。パネルディスカッションにおいては、医師会の動き、政府の外国人医療や共生に関わる予算の変化、各自治体や団体の取り組み、関係者同士のつながりについても述べられました。関東では数年前に東京オリンピックが行われ、関西においてはこれから大阪・関西万博を控えています。それぞれの地域特性や国際イベントにおける前後の変化も知ることができる、内容の充実した勉強会となりました。

 

開催概要


テーマ:「外国人に対する感染症対策
日時:2023年2月5日(日)15:00~17:00
会場:AP大阪梅田東 及び ZOOM 

1) 谷口恭(太融寺町谷口医院)「外国人に対する行政の問題」
2) 末光伊芙季(株式会社barca 代表取締役)「外国人目線で考える日本の医療の壁」
3) 澤田真弓(メディフォン株式会社 代表取締役CEO)「外国人労働者がこれからますます健康に活躍するために」
4) 小川清楓・松村実祐(浜松医科大学学生)「日本の外国人医療と感染症」
5) 李祥任(公益財団法人結核予防会結核研究所 臨床・疫学部 研究員)「外国出生者・移民の結核対策における最新の取組み」
6) パネルディスカッション
    パネリスト:【現地】谷口恭(太融寺町谷口医院院長)、木戸友幸(愛港園診療所院長)、久保田恵巳(くぼたこどもクリニック院長)、青木理恵子(NPO法人CHARM代表理事)
【オンライン】李祥任(公益財団法人結核予防会結核研究所 臨床・疫学部 研究員)、澤田真弓(メディフォン株式会社代表取締役CEO)、堀成美(国立国際医療研究センター 客員研究員)



関西の外国人医療を考える会」について


同会は、大阪にて総合診療医として外国人患者も積極的に受け入れ診察を行われてきた医療法人 太融寺町谷口医院 谷口恭院長と、医療機関向け遠隔医療通訳サービスを提供されているメディフォン株式会社 代表取締役CEO 澤田真弓さんが中心となり2018年に立ち上がった任意の勉強グループです。

外国人医療に関わるステークホルダーは地域において孤立する傾向があり、情報・課題共有とステークホルダー同士の交流を目的にスタート。2018年6月に三重・津市で開催された第9回日本プライマリ・ケア連合学会の外国人医療のシンポジウムがきっかけで発足し、2018年7月から約半年に1度、今日までに全7回の勉強会を行ってきました。

最初こそ参加人数の少なかった同会も、会を重ねるごとに参加者が増加し、コロナ禍で始まったオンライン配信では全国から毎回約100人の参加がありました。



  勉強会内容のご紹介


冒頭で太融寺町谷口医院が2023年6月30日をもって閉院予定であることが伝えられ、大阪の外国人医療を支えられてきたクリニックが閉院されることが伝えられ、参加者や登壇者は悔しさと不安を感じていました。しかし、谷口先生は今後も外国人医療、「異国の地で医療を受けられない人たち」への支援を続けられるとのことで、世界中どこにいても、同じ課題を共有できることを大変心強く感じました。


谷口先生からは過去15年の同院での経験から「クリニックでは医療通訳は不要であり、日常会話の英語ができる受付スタッフがいれば救われる患者が多くいる」という話をご紹介いただきました。
日本の外国人医療において、「職場(もしくは友人)で日本語が分かる人を連れてくるように」と言われることが非常に多いかと思います。しかし、入ったばかりの会社の同僚や先輩に疾患(ときにはガンやHIV、重症疾患であることも…)についての情報を伝えたり、そのような大切な意思決定の場に参加されることはふさわしいことなのでしょうか?

外国人であるかどうかではなく、医療関係者として何気ない一言が及ぼす影響を考えさせられる事例だと感じました。


次に末光氏(株式会社barca)からは、実際に外国人の方々がどう病院を検索し、どう受診までの行動を行い、当事者としてどのような課題を抱えているか、について実際に日本語の不自由な外国人から行ったヒアリング内容をもとに発表がありました。


澤田氏(メディフォン株式会社)からは、これまで日本はたくさんの技能実習生といわれる外国人を受け入れてきたが、現在その人材は福利厚生や条件の良い韓国やアメリカ、ヨーロッパなど他の国に流出していること、同社のアンケートからわかった、在留資格によって
受診時の言語支援ニーズが異なることなどを発表いただきました。


小川氏(浜松医科大学)からは人口の移動や気候変動によって、熱帯地域特有の病気が日本でも発見されていること・それに必要な対策、松村氏(浜松医科大学)からは新型コロナウイルス感染症と心膜炎との関連や諸外国との比較などを発表いただきました。


李氏(結核予防会結核研究所)は、日本における外国人(外国出生者)の結核の動向や、実際に同氏が関わっておられるベトナム人コミュニティとの医療に関わる取り組みなどについて発表されました。




パネルディスカッション


パネルディスカッションでは「過去・現在・未来」に分けて約1時間のディスカッションを行いました。
ディスカッションの中では関東と関西とで動きが違ったり、経験豊富な専門家が7名登壇されているということで、1時間では物足りずどの登壇者の話も深堀りしていきたい、とても充実した内容となりました。

関西においてこれからのホットトピックである「大阪・関西万博」。数年前にあった東京オリンピックにて選手村での医療サポートも経験された堀成美氏(国立国際医療研究センター 客員研究員)の知識と経験、そしてコロナ禍という非常時の東京オリンピック開催までに行われてきた様々なステップはこれから関西においても参考にしたい部分が多くあると感じました。
またディスカッション中は、ハイブリッド開催ということもあり、チャット欄からの質問やご意見も多く発信されていました。


医療は生活におけるインフラです。


労働人口が減少する日本において、外国人にも労働者として、そして生活者として日本に暮らしていただくこと、またインバウンド観光客を積極的に受け入れ、日本各地を活気づけていくことは必至であり、現在国全体として向かっている方向であると認識しています。

「おもてなし」といっている日本なのに、旅行でケガ・病気をしたときに病院がみつけられなかったり、見つけられたとしても受診拒否されたり、受診方法がわからなかったり、、、観光客は「おもてなし」するけど在住外国人については「郷に入れば郷に従え」とサポートが得られなかったり…日本を魅力的に感じ、生活地・観光地として選んでくれた人々にとって安心できる環境になるよう、また受け入れる側としても安心して迎え入れられるよう、それぞれのステークホルダーがチカラを合わせて取り組んでいく必要性を強く感じた勉強会になりました。

 

今後の開催予定


冒頭に記載させていただいたように、「関西の外国人医療を考える会」として課題共有の場は今回が最後となりました。
しかし、せっかくこれまで築いてこられたこの会のネットワークを活かし、今後は「外国人医療に関わる施策・方針の共有」「施策提言のためのディスカッションの場」等として、別のカタチで場を設けられる様、澤田さん(メディフォン株式会社)とともに効果的な会になるような機会をつくっていこうと話を進めています。
また、今後の方針が固まり次第共有させていただければと思っております。


谷口先生、2018年からこれまでの間「関西の外国人医療を考える会」として課題共有の場をつくっていただき、貴重なつながりをつくっていただきありがとうございました。

 

 

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